繁殖引退犬を迎えた話|6年間ケージで生きてきたチャコのはじめての表情

家族が増えました。
チャコ。
6年間、ケージの中で繁殖のために生きてきた子です。
これまで野良犬や飼育放棄された子を迎えてきましたが、今回の出会いは、これまでとは少し違いました。
チャコには犬らしさがなく、表情がありませんでした。
この子は来月には義母のもとへ旅立ちます。
1か月間の家族ですが、チャコという繫殖引退犬が心と表情を取り戻した変化を紹介したいと思います。
6年間、ケージの中で生きてきた犬


チャコは6歳。
その6年間をケージの中で過ごしてきました。
太陽の温かさや土の感触、名前を呼ばれたり抱きしめられる喜びも知らずに。
生きてきた。
というよりも生かされてきた時間だったのかもしれません。
家に来たばかりの頃のチャコは、目が合いませんでした。
感情が見えず、ただ、そこにいる。
怯えているのだけは分かる。
空っぽな子。そんな印象でした。
感情と表情が生まれた日


チャコの変化は、わが家にきて翌日からあらわれました。
嫌なことには、はっきり嫌な顔をしたり態度で示す。
嬉しいことには、目がやわらぐ。
感情と表情が出てきたのです。
嬉しいことだけじゃなく、怒ることも嫌がることも、実はとても大切。
それは、心が動いている証だから。
感じることを、チャコは少しずつ思い出しているようでした。
この子は生きている。
そう強く感じた瞬間でした。
6年間、感情を閉じ込めるしかなかった子が、今は怒り、嬉しがり、戸惑いながらも反応してくれる。
それだけで、奇跡のように思えます。
抱っこが怖い理由

ひとつだけ、今も胸がぎゅっとなることがあります。
抱っこをするときです。
抱き上げる瞬間だけ、チャコは極端に怖がり、体が硬直して動けない、または必死に逃げようとする。
きっと、ケージから乱暴につかまれ、繁殖のためや掃除するときだけ外へ出されていたのだろうと想像します。
そう思うと、ほんとつらい。胸が痛みます。
でも、抱き上げてしまえば、チャコの体はふっと力が抜け、幸せな表情で静かに身をあずけてくれる。
怖い記憶は残っている。
でも、抱っこは心地よいと気付いている。
心と体が、少しずつ追いついていく途中なのだと思います。
繁殖引退犬と元野犬の違い

わが家にはいろりんとぶーちゃんがいます。
以前は元野犬の子うみもいました。
いろりは山を放浪して一人で生きてきたので、怖がりだけど犬らしさをもっています。
- トイレは土があるところでする
- 穴を掘る楽しさを知っている
- あちこち匂いを嗅ぐ
- 他の犬との関わり方を知っている(遊び方はぶーちゃんが教えてくれました)
などなど。
チャコは、狭い世界で生きてきて経験がないのでなにも知らない子。
トイレをするときは、垂れ流しという表現がぴったりなくらいでした。
外に連れていっても、おしっこはアスファルトの上にするし、外を楽しむ余裕はなく、ぐるぐると右回転で動き回ります。
強いストレスからくる常同行動。これはまだ続いています。

胸のあたりの毛はなく、これもストレスが原因と思われます。
わが家にきて1週間くらいで、少しずつですが生えてきました。
保護されてから2か月間、預かりさんのおうちで美味しい食べ物の存在を知り、とにかく食べることが大好きです。
「こんな美味しい食べ物が世の中にあったのか!」衝撃だったんでしょうね。
太陽の下で風を感じたり土の匂いをかぐ。
これまで経験したことのないお外ではまだゆっくり過ごせないけれど、チャコ本来の可愛らしい性格がどんどん出てきています。
元野犬だったうみや放浪していたいろりは、おそらく遺伝的に怖がりの性格が強いと感じます。
臆病で慎重だからこそ野生で生きてきた証。
チャコはもともとはとても陽気で甘えん坊な子。
本性が出てくるのはかなり早かったです。
宿に来てくれた繫殖引退犬とそのご家族

いろりの森には、繁殖引退犬を迎えたご家族も多くいらっしゃいます。
「迎えたころは、肉球が赤ちゃんみたいだった。」
チャコもそうなんですが、ゲージの中で過ごしてきた子は、散歩をしていないので肉球がふわふわなんです。
ボールで遊ぶことを知らなかったり、犬嫌いの子が多かったり。
温かい家庭に迎えられ、家族として過ごすうちに人の温もりを知り、日々笑顔が増え、犬らしさを取り戻す姿。
その成長に私たちも幸せを感じます。
おわりに|生きていてくれたことに感謝

チャコは、まだ抱っこの瞬間を怖がります。
でも、抱かれている時間は穏やかです。
表情、そして感情を表せること。
それが、何よりの希望です。
過酷で孤独だった環境を6年間よく耐えてきました。
チャコの犬生ははじまったばかり。
命はやり直せます。
生きていてくれてありがとう。



